再び伊豆大島に思いを馳せる

4月に入って気候も落ち着いてきたので少しずつ自転車に乗っています。

 

今年のブログのエントリーは伊豆大島の話に偏っていますが、再び書いてみたいと思います。

全日本自転車競技選手権大会ロードレースも伊豆大島での開催となり、出場権とは程遠い私にも気になる観戦ツアーが募集されています。

第85回 全日本選手権自転車競技選手権大会ロード・レース | 国際興業トラベル

 

伊豆大島について気にしているうちにいろいろと気がつくことがありました。

下の画像はGoogleマップによる空中写真ですが、元町の南側に緑の少ない部分があることに気付くと思います。

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泥流により、

死者:35名
行方不明者:4名
住家被害(全壊)46戸
住家被害(半壊)40戸 

という大きな被害が出た箇所は今でもそのまま残っています。台風の被害の詳細は下記のリンク先をご参照いただければ幸いです。

【2013年11月12日】 平成25年台風第26号伊豆大島の土砂災害の概要 - 国土交通省庁[PDF]

 

6月に開催される全日本自転車競技選手権大会ロードレースの宿泊に関しては、この台風の被害による伊豆大島復興支援助成金によるサポートがなければ成り立っていないように感じます。

補助金についてはよい捉え方をされない傾向がありますが、少なくともこの衛星写真を見るかぎりはそういった個人的な感想はどうでもいいような気がします。

 

そして今年の1月に開催されたアジア自転車競技選手権大会ロードレースについて伊豆大島の広報紙「広報おおしま」2016年度3月号にこのような記載があります。

大会開催に際し長期間・長時間の交通規制を実施したため、コース周辺 の住民の皆様、事業者の皆様に大変ご迷惑をお掛けしました。また、交通 規制等の周知が不十分であったことも併せてお詫びいたします。本大会は大島で初の国際大 会であり、多くの外国の方々が来島したため、一部の国のマナーの悪さや交通ルールを遵守できない等 の問題が発生し、外国人の受け入れの難しさを痛感しました。今後は、本大会での問題及び経験を基に 大会実施方法を再検討し、6月開催の全日本自転車競技選手権大会に備えていきます。 コース周辺住民の皆様、事業者の皆様、大島町民の皆様、ご協力ありがとうございました。

 

ここ数年の流れを見る限り、公道で開催されるロードレースが縮小傾向にあることを踏まえると、日本においては環境負荷の高い出来事のように感じます。

6月の全日本自転車競技選手権大会ロードレースでは、島外から訪れる選手も観客も、島内の方にとってよい出来事となるような努力が必要なように感じました。

 

 

アジア自転車競技選手権大会トラック競技観戦紀行

アジア自転車競技選手権大会、ロードレースの翌週はトラック競技。さすがに平日の休暇の取得はもう無理なので、せめて土曜日だけでも、ということで修善寺日本サイクルスポーツセンターに行ってきました。

前回のロードレース観戦紀行の続編的になりますがお読みいただければ幸いです。

 

1月30日。

今回の旅は品川駅4時35分始発の東海道線の鈍行でスタート。

開場時間に間に合うようにたどり着くには、この列車に乗るか前日に現地に宿泊するしかない。さすがに毎週宿泊は無理なので列車の旅を選択。

ほぼ全部を居眠りで過ごしたので体感乗車時間はほんのわずかのように感じる。そして熱海駅で最初の乗り換え。熱海以西はSuicaが使えないので一度改札を出て切符を買い直す。

そして三島駅伊豆箱根鉄道に乗り換え、こちらも居眠りしていたのであっという間に修善寺駅に到着。駅構内に今回のアジア選手権のバナーや駅前にものぼりが立っていて盛り上がってくる。

駅から日本サイクルスポーツセンターまでこの大会のために運行されるシャトルバスもあるのだけれど、開演前にたどり着きたかったのでタクシーを拾う。タクシーの運転手とアジア選手権についてあれこれと世間話をする。

 

到着。無事に一番乗り。

車で観戦に来られている方もいるようだけれど、寒いので車内で待機しているようだ。ずっと冷たい雨が降っている。標高400メートルぐらいあるのでかなり寒いがなるべくよい場所で観たいので外で待つ。

シャトルバスも到着して徐々に列が出来てきた。まだしばらく時間があるけれど静岡県自転車競技連盟の松村理事長が出てこられて、
「本日の開場時間は8時30分を予定しておりますが、寒い、早く中に入りたい、ワクワクが止まらない、などの理由により10分早めます。今しばらくお待ち下さい!」
とアナウンス。素晴らしい!ありがとうございます!

 

時間になり中に入ると目当ての席を確保。中は暖かく、Tシャツでも大丈夫なほどだ。入口へ戻り大会限定の記念品を買いに行く(実際に走路に使われているシベリア松で出来た木材の切り出しに記念の烙印が押されている)。

 

競技開始時刻までは練習走行の時間で各国の選手が周回を繰り返している。入口でパンフレットも貰ったのだけれど、変更になったプログラムは反映されていないので何をやるのはわからない(IDの無い観客側のエリアには紙に書かれたものでの情報はない)。

スマートフォンで公式サイトで公開されているコミュニケを確認してなんとか把握する。大きく大別すると以下の種目になる模様。

  • 男子ジュニアスプリント
  • 男子エリートスプリント
  • 男子エリートマディソン
  • 女子ジュニアケイリン
  • 女子エリートケイリン
  • 女子エリートオムニアム

スプリントはトーナメントとなるためレース数も多いが短時間で終わるので、スプリントの合間にケイリンやオムニアムのポイントレースやマディソンを挟む感じで進行するようだ。

昨年、全日本選手権オムニアム大会の一部を観戦したけれど、トラック競技はどの席からも全ての走路が見渡せるため、競技を間断なく観戦できるのがいい。特に伊豆ベロドロームは屋内競技上だから観戦とは書いてもロードレースとはまた別の、歌舞伎や演芸などを観に行く感覚に近いように個人的には感じている。 

 

ホームストレート側のエプロンの近くなので、選手がホルダーに支えられて走路に出てくるところから楽しめる。

 

男子ジュニアスプリント、1/4決勝の中島詩音選手と伊藤歩登選手。

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スプリントは1対1で短時間の間に駆け引きを経て、一番でフィニッシュラインを通過すれば勝ちという最もシンプルな種目。わかりやすい分興奮できると思う。

 

そして大型ディスプレイにそれぞれの種目の開始前に案内が出るが、文字が小さく読みずらい。しばらくすると場内のカメラの映像に切り替わってしまうため、誰が走っているのかが時々わからなくなる。

アナウンスもあるのだけれどほとんど聞き取れない。P.A.の位置がよくないからだろうと思う。照明と同じ高さから下向きにスピーカーを吊るしているけれど、天井との間にかなりの隙間があるので音が向かってきていないような。

 

女子ジュニアケイリンで今週も細谷夢菜選手を応援。

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見事1位で予選通過。来場者も増えてきていて大きな拍手が起こる。

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競技はどんどん進行していく。走路がクリアになればすぐに次の種目の準備が始まる。

 

中にはやや複雑な種目もある。今回観た中ではポイントレースとマディソン。

オムニアムのポイントレースは総合順位を決めることもあり、ポイントが付く周回までの展開と何でポイントを獲るかの選択で駆け引きがあるので目が離せない。今回は25キロメートルだから100周回重ねることになる。

スタートはフライングスタートで最初は走路の内側と外側に選手が並ぶ。一番前の席にいると目の前に選手が並ぶことになる。上段の席のほうが全体を見渡せやすいけれど、この選手が間近に来る感覚のほうが実は好きだったりもする。

今回の間近で見る選手はカザフスタンのNadezhda Geneleva選手。

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お昼近くになりほぼ全席が埋まって立ち見が出るほど。素晴らしい。

地元の方は入場無料になったようだけれど、じゃあタダだったら行ってみようか、とは単純にならない気がする。興味があるから足を運んでいるのだと思う(東京オリンピックがどのようになるか全くわからないけれど、観客席を増やしても全て埋まりそうな気がした)。

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ポイントレースはポイントのある周回のスプリントのあと選手が走路に広がっていくところの動きが好きだ。

 

日本ナショナルチームは塚越さくら選手が出走。すぐそばに鹿屋体育大学のファンの方がいるので「さくらー!」と声援が飛ぶ。そしてポイントを獲れば皆で大きな拍手をして盛り上がる。

上手くポイントを重ねて総合で3位に入った。

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オムニアムの中のポイントレースは総合順位に影響するので逆転を狙ってくる走りがあるので観ていて盛り上がる。

 

そしてまたスプリント。男子エリートの中でひたすら魅力的な走りをする選手がいる。マレーシアのMohd Azizulhasni Awan選手。

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彼は必ずフェンス側を走り観客にアピールする。目の前で駆け引きをされたらそれだけで展開から目を離せなくなる。この1/2決勝では韓国のIm Chaebin選手のほうが強かったけれど、ほぼ全てのレースで必ずフェンス間際までくるAwan選手は圧倒的に魅力度が高く、その後の競技でも彼が走ると開場全体が湧くほどである。

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女子エリートケイリン。自分の座っている少し後ろ側の席は日本ナショナルチームのジュニア選手が何名かいる模様で声援が聞こえてくる。

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女子エリートケイリン前田佳代乃選手が出てくると、後ろのほうから「ま・え・だ!ま・え・だ!」と大きなコールが。松村理事長が席までいらしていていっしょに盛り上げてくれている。

 

午前のレースだけでお腹いっぱいな感じである。休憩時間もそこそこに午後の競技が始まる。

きょう一番の目的の男子エリートマディソン。今までインターネット上の動画のみでの観戦であったけれど、いよいよ生で観られる。 100周回を各チームが二人で交代しながら競う。

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日本は原田裕成選手と新村穣選手。

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7チームで14名の選手が走路にいて、選手が入れ替わり走路の途中にも選手がいるからいきなり見ると何がなんだかな状況になってくるけれど、ラップ・カウンターを勤めるコミセールのうち二人が常に先頭を指で追っているのでそこを観ていれば先頭だけは把握できる。

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各チームがタイミングを合わせてタッグを組み交代していく。

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日曜日に伊豆大島の男子エリートロードレースで優勝したCheung King Lok選手が今日はLeung Chun Wing選手とペアを組んで上手く先頭で周回を重ねている。

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 最後は韓国と香港によるスプリント。

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Cheung選手がガッツポーズをして香港チームが優勝!

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 …だったのだけれど、しかし。判定の結果、僅差で韓国が先着していて韓国が優勝でした。無茶苦茶嬉しそうだったのだけれど、残念。

 

そして韓国が強い。

男子ジュニアスプリントはJeong Yunhyeok選手とKim Chengsu選手が1位2位決勝を走りJeong選手が優勝を決めた。

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そして男子エリートスプリントも優勝は韓国のIm Chaebin選手。2位は中国のXu Chao選手。

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案外話題にはなっていないけれど、今のアジアの自転車競技を統括しているのは韓国だ。アジア大陸自転車競技連合の本部は韓国にある。会長のCho Hee Wook氏はUCI副会長の経験もある。

韓国では近年、スイスのUCI World Cycling Centreで選手の強化も行っている話も耳にする。

 

最後の種目は男子エリートスプリント3位4位決定戦。再びAwan選手の登場。中国のBao Saifei選手との対戦。Awan選手が仕掛けた瞬間に場内から再び大きな歓声が!

先行したAwan選手が勝った。大きな拍手が沸き起こる。

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そしてAwan選手が魅力的なのはのは戦った相手に必ず敬意を表すところだ。

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さらにもう一周して観客とハイタッチ。この写真を撮ったあと、すぐに手を差し出したら見事にハイタッチしてもらえた。思い出がまたひとつできてとても嬉しい。

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最終日なのでトラック内のフィールドではどんどんと機材の梱包が始まっている。カザフスタンの選手は先に梱包が終わって時間が出来たようなので、テニスボールのようなものを皆で蹴って遊んでいる。少し間があり、表彰式へ。全ての競技が終了した。

 

表彰式を眺めながら、先週に引き続き今週もお会いした観戦仲間の方にごあいさつをして開場を後にした。

これでアジア自転車競技選手権大会は全て終わり。外には各国の選手団を成田空港まで送迎するバスと機材を運ぶ大型トラックが数台待っている。終わる寂しさではなくたくさんのものを2週間かけてじっくりと観た中で得たものへの感謝のほうが上回っていて、満足げに心の中で手を振った。

駅までの帰り道はシャトルバスでのんびりと。修善寺駅で後からきた家族と待ち合わせて修善寺温泉で一泊して、ゆっくりしてから翌日帰路についた。

 

この日観た全ては書ききれなかったけれども、特に印象に残った部分を中心に書いてみました。そしてまたベロドロームに観戦に行きたくなったのでした。

長々となりましたがお読みいただきありがとうございました。

アジア自転車競技選手権大会ロードレース観戦紀行・その6

その5からの続き)

いろいろと最低な土曜日の夜。それでも朝になれば日曜日。一度目が覚めたところで電気を消して少しでも寝ることにする。

 

1月24日。

寝足りてない感じもするけれどスマートフォンのアラームに起こされる。出かけた日と同じように全ての荷物をパッキングして、宿の方にお礼を言って暗いうちに元町港に向かう。

風は強いけれど目の前の大きな月に励まされる感じがする。こうした風景は写真には納まりにくいので心のシャッターを切って胸に焼き付けておく。

上陸した朝と同じように再び「おともだち」へ。ここでの朝食が一番落ち着く。

マスターとまた世間話をする。しばらくすると観戦のために今朝着いた船で島に着いた方が数名来店される。たぶんではあるけれど知り合いの知り合いぐらいの方のようで心強い。

食べ終わって店を出たけれど風が強いのでしばし港の待合室で時間をつぶすことにする。

 

そろそろかな、といったタイミングを見計らってメイン会場へ。日曜日で男子エリートということもあってかなりの方が今朝の船で渡ってきたようだ。知った顔に挨拶をしたりされたり。8メートル近い風をのぞけば晴れで、自分にとっては居心地のいいところに戻ってきた気がする。

 

今朝も同じように「いつもの場所」に移動してスタートを待つ。目の前にモト・コミセールが並ぶといよいよ最後のレースが始まる。男子エリートは154.7kmの13周回。

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 そして今朝も定刻にスタート。

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今回は登り始めへは行かず海沿いのパームラインへ。御神火温泉の駐車場へは降りずにもう少し先の町道との分岐まで移動したけれど突風で波飛沫が強く近寄れない。薄く小さな虹が目の前にできるほどだ。テトラポットに白く波がくだける。

1周目はニュートラルスタートということもあるかもしれないけれど、ラップタイム的にレースの進行が限りなく遅れている。ファーストアタックはマレーシアとベトナムの選手。

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 先へ進んで写真を撮りたいのだけれど波飛沫がすごい。まずはカメラに雨用のカバーをつけてアウターウェアのフードを被って大丈夫な態勢を整える。

 

2周目も逃げが続くが集団は活性化しているように見える。そして次の3周目の通過までにイラン・イスラム共和国チームが上手く体制を整えたようだ。

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横風をよけるために3人だけでエシェロン(雁行)を作り3番目の選手が門を閉じてリードアウトを保っている。かなり強力なアタックのようだ。

イラン・イスラム共和国の選手は毎年ツアー・オブ・ジャパンであっさりと勝ってしまうような印象があって悪く言われることもあるけれど、こういったところで巧者なのだと思う。

最後尾は全員でエシェロンを形成するほどの突風である。

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さらに先に進んで大きく曲がるコーナーのある付近へ。4周目はトップグループは変わらず。

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トップグループで新城幸也選手とともに周回を重ねる別府史之選手。

 

きょうは周回数が多いので行けるところまで逆回りで観戦してみようと思い大島空港との分岐まで進む。

ちょうどすぐそばにイラン・イスラム共和国チームのスタッフがやって来た。大島へ渡る船で見た近寄りがたい雰囲気もきょうはなく逃げをきめた様子に嬉しそうだ。

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5周目の選手の通過のあと、この写真をカメラのモニター画面で見せて"Your team?"とわざとたずねてみた。"Yes!"と返ってきたので、"Very strong!"と返してそれとなくコミュニケーションをとってみる。嬉しそうな笑顔が返って来た。

そして周回数がここで変更になったようだ。トータル10周回の119.0kmに。強風による進行の遅れが影響したようだ。

 

6周目、空港のトンネルまで来たがイラン・イスラム共和国チームの逃げが続く。

7周目は大島一周道路と交差する下り区間の途中まで移動したところで観戦。イラン・イスラム共和国チームの逃げもそろそろ限界のようだ。

 

大島一周道路を元町港方面へ下り再びメイン会場に戻る。向かい風なのでなかなか進まない。8周目の先頭グループは通過した後に到着。

実況では香港のCheung King Lok選手が強力なアタックをした。トラック競技でも活躍しているので、詳しい方から先に名前を教えていただいていたので親しみがある(読み的には「チェンキンロー」や「チェンキンロッ」あたりが正しいようだ)。

 

新城選手が単独で追っているようだけれどタイム差が縮まらない。

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メイン会場に響く実況を頼りに最後の瞬間を待つ。差がなかなか縮まらない。

最後は逃げきってCheung選手が優勝を決めた。

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もしも距離の短縮がなければ捕まえるチャンスがあったかもしれないけれど、Cheung選手はトラック競技の長距離部門も走る選手。それゆえに持っている引き出しがまた違うけれども、今回は上手く合てはまったのだと思う。

 

表彰台の前に陣取る。きょうは200人ぐらいの人が集まってまたプレスの方が撮影する場所がないほどだ。ところが強引に私の座っている上でドカッと強引に乗って場所をとってくる人がいる。重いんだけど…どうやら香港チームの監督のようである。それならばぜひ、ということで少しだけ場所を空けて"Congratulations! "と言ってみる。

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 2位の新城幸也選手、1位のCheung King Lok選手、3位の別府史之選手。

 

香港の国歌(実際は中国の国家と同じだけれど)が盛大に響き、全てが終わった。

 

帰りは新中央航空で調布まで飛ぶ予定だったけれど、風が弱まらない。大会がチャーターした全日空機は着陸できなかったらしい。ただ電話で確認してみると聞き覚えのあるパイロットの声で、

「飛びます!」

と力強い返事をいただく。

大島空港まで移動して自転車を輪行パッキングをして15:30まで時間をつぶす。調布飛行場からの飛行機が着陸できれば、という条件付きなので、何人かはリスクを回避するためタクシーで岡田港に向かって大型客船に乗ったようだ。

しーんとしたフロアで待つことしばし。駄目だったらもう一泊か。もしそうなら少しいい宿を紹介してもらおうかな、などと考えて気を紛らす。

調布からの飛行機は定刻に無事に着陸。これであとは飛んでしまえばこの旅も終わる。

 

 

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小さなプロペラ機だけれど、乗り込んでしまえばあまり心配はいらない。励まされるように力強くエンジンが始動する。短い滑走の後、離陸。

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さっきまでいた場所が眼下に遠くひろがり少し切なくなる。少し揺れながらも時々うとうととしていると20分ほどで調布飛行場へ。

一刻も早く帰りたいのでタクシーを拾って自宅へ。

「ただいま。」

 

 何回かに分けて公開してきましたが、かなりの方に読んでいただきとても感謝しています。久しぶりに文章を書く楽しさみたいなものも思い出しました。

東京にいながら世界を感じた三日半でした。行きにいっしょになったイラン・イスラム共和国チーム、いっしょに写真を撮って欲しい頼んできたシリアの選手、他にもいろいろな方と片言で話したりでアジアを凝縮した時間はとても素敵でした。

 

伊豆大島は船か飛行機に乗れば案外近いところです。今度は全日本選手権が開催されますが、都合がつくようならそれ以外でも何かの機会にまた行ってみたいと思います。

ありがとうございました。

(翌週、トラック競技を伊豆ベロドロームに観戦に行った話へと続きます。)

アジア自転車競技選手権大会ロードレース観戦紀行・その5

その4からの続き)

午後は個人的メインイベントの女子エリート。107.1kmで9周。

萩原麻由子選手がWiggle High5(以前のWiggle HONDA)で活動するようになって、UCI女子エリートカテゴリーについていろいろなことを少しずつ知るようになった。

ここ2年ほどインターネット上で、主にテキストで追ってきたUCI女子エリートレースを生で観戦できる嬉しさを胸にスタートを待つ。

きのうに比べるとレースとレースの合間に少しだけ余裕があるので、飲食ブースで売られていたおでんを食べて午後のレース観戦に備える。

 

少ない情報の中で知った限りではUCI Women`s Teamで登録をしている選手を揃えているのはカザフスタンと中国。カザフスタンはAstana Women's Teamが、中国はChina Chongming LIV Champion Systemがそのまま参戦しているに等しい。

韓国はUCI Women's Teamに現在登録している選手はいないけれど、ナショナルチームでの活動がメインのようだ。鍵を握っているのはこの3チームという予想。

 

定刻にスタート。

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1周目が終わったキャラバンを今回も同じ登り始めで見届けることにする(実際に走って感じることとは違うかもしれないけれど、現地で見た限りのことで状況を書いてみる)。

カザフスタンのNatalya Sokovnina選手がペースを作っているように見える。続いて韓国のLee Jumi選手とKim Hyunji選手。その後ろに坂口聖香選手。

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まだ集団はひとつになっていて、こぼれた選手も少なくキャラバンの通過は早い。見届けるとルーチンワークのように再びパームラインへ。

風速は4メートルほどで、海沿いはやや追い風。集団はひとつ。

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ヘリコプターを使った空撮を行っているらしく、キャラバンがどのあたりにいるのか遠くから分かるのは非常にありがたい。次の周回が来るまでにパームラインを北へ。

 

パームラインのピークを過ぎた先に少しだけ遠くに下り坂が見えるポイントがあったのでここで写真を撮ろうかな、と思い道路の反対側に場所を探す。公式カメラマンの田中苑子さんが先着されていて同じほうへレンズを向けて待機していた。

田中さんの撮影するプロトンと風景の写真が好きなので、同じ場所を見つけたのはちょっとうれしい。

邪魔にならないようにもう少し先の田中さんのファインダーの死角になる場所へ移動する。

 

それにしても牽制がかかっているのか3周目は恐ろしくレースの進行が遅い。通り過ぎたレースディレクターが少し先で完全に車を止めてしまって選手が来るのをしばらく待ってしまったぐらいである。

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そしてようやく遠くに通過するプロトンを確認。

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目の前を集団が通過していく。

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このコースだと早くにリストラが行われるかと思ったけれど牽制がかかっているようだ。

 

少しメイン会場から遠くまで来てしまった感じなので、次の周回が来るまでに御神火温泉のそばまで急いで戻る。

4周目も集団はひとつ。この周はペースが上がった感じでカザフスタンと韓国が先頭。観戦仲間の知り合いもきたので世間話をしつつ、同じ場所で次の周回まで過ごす。

5周目、ようやく逃げが形成。カザフスタンのMakhabbat Umutzhanova選手を先頭に4名が先行。韓国のKim Hyunji選手、ベトナムのNguyen Thi That選手、そして日本の金子広美選手。

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ようやくレースらしくなってきた。後方では中国チームが3人使ってアタックを潰しにかかっているような雰囲気。

 

フィニッシュまでにメイン会場へ少しずつ戻ることに。次の6周目、目の前を選手が通過するまでには先ほどのアタックは吸収されて再び集団はひとつに。韓国はLee Jumi選手が積極的に動いている。

7周目は大島警察署の前の交差点で観戦。カザフスタンのNatalya Sokovnina選手が再び積極的に引き韓国が全力でチェックする流れに見えた。

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金子選手が萩原選手を手厚くアシストしている。

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メイン会場に戻りフィニッシュを待つ。8周目に入っているため次に選手を見るときは最後の周回に入るタイミングになる。実況で萩原選手と韓国のNa Ahreum選手が逃げていることを知る。さらに二名が合流したと。

 

情報は耳に入る実況だけである。気が気でない。そして最後に目の前でスプリント勝負をNa Ahreum選手が下す。

 戦略的に成功したのは韓国。日本には最後の局面でよいカードが回ってこなかった。攻め続けたカザフスタンも然り。レースとは水物なのだと思う。

 

目の前で起こった出来事が上手く心の中で整理できないけれど、萩原選手が3位に入ったので急いで表彰台の前へ移動する。きょうは抽選会もあるのできのうとは違いあっという間に100名近い人が。ゴール後の囲み取材をしている後に来たメディアの方が撮影場所を確保出来ないほどに人が集まっている。

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2位のPu Yixian選手、1位のNa Ahreum選手、3位の萩原麻由子選手。

 

表彰式の最中に大粒の涙がひとつ、萩原選手の頬を伝う。きょう見たかったのはそれではないのだけれど。韓国の国歌が流れ終わると出来る限り大きく拍手をしてみる。

韓国ナショナルチームが勝利を祝い記念撮影をしている。

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左からGu Sungeun選手、優勝したNa Ahreum選手、Kim Hyunji選手、 Lee Jumi選手。

 

朝食のことを引きずっているのか宿にあまりいたくない。宿に戻るとまずは明日の朝食がいらない事を丁寧に告げる。

どこに向かおうか決めかねたまままた宿を出てひたすら歩き続ける。

 そして土曜日だというのにきょうは店もほとんど開いていない。歩き疲れた先に見つけた元町港のベンチに腰をかけ、暗くなるまできょう撮影した写真を眺めて気持ちを整理していた。

 この寂しさはなんだろう。急に早く家に帰り家族に会いたくなってしまった。いまここに一人でいる事を申し訳なく思う。

 

そして夕食にありつけないことがなおさら辛くさせる。スーパーで手に入れたヤマザキのランチパックと魚肉ソーセージが夕食になる。とてもひどい気分で早く家に帰りたい。

 

電気をつけっぱなしたまましばらくうとうととする。

その6へ続く)

アジア自転車競技選手権大会ロードレース観戦紀行・その4

その3から続く)

1月23日、土曜日。出発する前にまずは朝食を。

時間もあまりないため会場に向かえる準備をして宿の食堂へ。和食なのだけれど珍しく出された料理が久々に口に合わなかった。ほどほどにして出発。

少し寒くきょうは冬らしい天気。宿のほうが少し高台にあるので伊豆半島との間の航路がよく見える。自衛隊海上保安庁?それらしきグレーの船が航行するのが見える。

 

メイン会場の準備が進む中、フィニッシュラインのゲートが設置されていたので自転車でガッツポーズをしながら通過するとどこからともなく笑い声が聞こえてくる。きょうは抽選会もあるので早くからたくさんの人が集まっている。きのうは無かった飲食のブースも出ているのでまずはひと安心。

スタート時間が近づくとキャラバンの前方の隊列が準備される。チームのサポートカーが入るレースはそうそう無いのでこれだけで盛り上がってくる。

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いろいろな車両がいる中、レース中に情報を伝えるインフォメーションのモトは前の運転する人の背中に選手のリストを貼ってすぐに確認できるようにしている。

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午前は男子アンダー23で119.0kmの10周回。

御神火太鼓のデモンストレーションで盛り上がったあとに定刻にスタート、なのだけれど、ニュートラルを無視してパキスタンの選手がいきなり飛び出す。そこにシリア・アラブ共和国の選手が続こうとしたので第2コミセールカーからけたたましくクラクションが(笑)。

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きょうも2周目はきのうと同じ登りで観戦。イラン・イスラム共和国チームを先頭に。

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キャラバンの通過を見届けると裏道をつたい海沿いのパームラインへ出てその後の様子を見守る。

レッグウォーマーを着けている選手も多くかなり寒いのだけれどモンゴルチームは半袖の選手がほとんど。見ているほうが肌寒く感じるのだけれど、今のモンゴルはマイナス40℃ほどらしく、彼らにしてみれば日本の冬は全然暖かいらしい。

アジアは広く、温暖な地域のチームは寒さで一気に弱っている。

 

3周目はイラン・イスラム共和国チームを先頭に3名の逃げが形成される。日本チームは小橋勇利選手を送り込んでいる。

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少し北上してパームラインのピークで4周目を見るが、引き続き同じ逃げグループが出来ている。

男子アンダー23にもなればチームプレーが行われていて見る側も熱くなる。

 5周目は御神火温泉の付近に戻って見たけれど展開は同じ。ばらけた集団から数名が先頭の逃げに合流を試みている。6周目には合流した模様で日本は徳田優選手が逃げグループに合流。

そろそろメイン会場のほうに戻ろうと元町港から少し進んだところへ移動して、自転車を停めていると、モンゴルチームのスタッフが興味深そうに見ている。シクロクロス用の自転車は珍しいらしい。

7周目。

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イラン・イスラム共和国チームがチャンスを作ろうと積極的に動いている。きのうの男子ジュニアのレースではそうでもなかったけど、この年齢になるとフィジカル面で上回っている雰囲気が感じられる。

8周目の終わり。日本はチャンスを逃したのか脱落している模様。ベトナムのHuynh Thanh Tung選手は単騎ながらも上手く流れにのっている。

 

最後の周回へ入る頃にはイラン・イスラム共和国のMehdi Rajabikaboodchesheh選手がほぼ王手を掛けた感じになる。そして余裕のフィニッシュ。 

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3位に入ったMohammad Ganjkhanlou選手も早くに勝利を確信した模様。

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大島へ渡る船で見かけたイラン・イスラム共和国チームの寡黙さとは違い、彼らの顔に笑みが現れる。そして誇らしげなHuynh選手。

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2位のHuynh Thanh Tung選手、1位のMehdi Rajabikaboodchesheh選手、3位のMohammad Ganjkhanlou選手。

 

伊豆大島イラン・イスラム共和国の国家が流れる。これはかなりすごいことなのでは、と感じる。

その5に続く)

アジア自転車競技選手権大会ロードレース観戦紀行・その3

その2から続く)

正午からは男子ジュニアのレース。107.1kmの9周回。

女子ジュニアのレースの表彰式が終わると出走時間まで少ししか時間がなく、あっという間朝と同じように前方に入るニュートラルカーやモトが隊列を整える。

定刻にスタート。

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レースの行方を心配するよりも自分の昼食をどうするかが最大の問題になってしまっているのだけれど、会場周辺には特にお店もない。困った。あとで港のほうに下るまで我慢するしかないか。

 

女子のレースと同じように2周目は登り始めでキャラバンを待つ。

ファーストアタックはイラン・イスラム共和国チームを先頭にカザフスタンが優位か。その中に日本ナショナルチームから花田聖誠選手が食らいつく。

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プロトンが通り過ぎると一刻も早くこの空腹をなんとかしたく、メイン会場付近に停めておいた自分の自転車で港のほうへ。

 

キャラバンの通過までに何か食べるものを探しに出かける。ガソリンスタンドの先を曲がった広い道路にあったお店に駆け込む。食料品店ではなく雑貨店だったためちょっと失敗した感じもあったけど、運よく個包装のブラウニーがあった。時間もあまりないのでこれでいいかな。

急いで買って、3周目終盤の選手の通過を見る。粒が揃っているのはカザフスタンのようだ。

 

港まで下りきってパームラインの手前で先ほど買ったブラウニーを一気に食べる。

そして通過するキャラバン先頭でモト・コミセールもマビックのニュートラルサービスから何か受け取っている。こちらも補給タイムの模様。

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4周目は小野寛斗選手がアタック。イランから1名が反応した状態で目の前の通り過ぎる。日本チームも上手く動けている感じがあって頼もしい。

そのままパームラインのほうへ移動してみる。海を隔てて向かいには伊豆半島、そして南には利島と新島がそれほど霞むことなく見える。穏やかな海を眺めていると多くの心配ごとはどうでもよくなる。

 

金曜日の午後なのでさすがに観戦されている方は少ないけれど、伊豆大島在住の方に声をかけていただきしばし会話。

「どちらから来られたの?」

「あ、練馬ですね。」

「ああ、東京からですか!」

伊豆大島も東京都なのですよね、と少し微妙な心持ちになるけれど。

 

御神火温泉沿いのカーブは海とペロトンが撮影できそうな雰囲気。そして5周目のペロトンの通過にカメラを構え撮影する。

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日本ナショナルチームカザフスタンが上手くコントロールしている。

 

そろそろフィニッシュラインのほうへ戻ることにする。6周目と7周目は日本がコントロールしていたけれど、8周目の終わりまでにカザフスタンのDinmukhammed Ulysbayev選手とベトナムのThai Phan Hoang選手が上手くエスケイプした模様。

 

最後はUlysbayev選手が1位でフィニッシュ。かなり手前で勝利を確信したようで、スプリントで加速しながら叫びながらガッツポーズ。そして3位は花田選手が単独でフィニッシュ。 f:id:takeoekuni:20160122145105j:plain

ジュニアカテゴリーはいわゆる高校生になるけれど、国の代表でもある。自分の高校生の時なんて今でいう引きこもりの境目にいるような、いわゆる落ちこぼれだったなあ、とかそんなことを漠然と思い出す。素直に羨ましく思う。

 

表彰式でカザフスタンの国歌を初めて通しで聞いたけど、壮大な感じのメロディーなのは厳しい風土から生まれる感じなのだろうか。

 

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レースが終わるとコース上にあったバリアーが撤収されて一部を残し路上に日常が戻ってくる。

 

そしてコインロッカーに預けていた荷物持って、最初に観光協会の事務所へ行き、宿泊の割引券を発行してもらう。きょうのレースを観戦したのかどうかなど、いろいろたずねつつ世間話をする。地元の人とのふれあいもまたロードレース的な何かなのだな、と思う。

予約しておいた宿へ行く。予想はしていたけれどいろいろと古い建物で、なぜか火鉢が炊かれていて煙い。6歳ぐらいまで親戚の家に火鉢があったことを思い出したけれど、こんなに煙いものだったけかな。

夕食は同じチームに所属する柳瀬さんに教えていただいた寿し光さんへ。一日中レースを追うのは体力がいるけれど、気持ちは満たされつつ最初の日は過ごせた。

(その4へ続く)

アジア自転車競技選手権大会ロードレース観戦紀行・その2

1月21日の夜に出発して伊豆大島に行ってきました。久しぶりのひとり旅だったのでいろいろと記憶に残るものも多かったので何回かに分けて書き留めておこうと思います。

 

その1からの続き)

1月22日、早朝。

大型客船を下船して持参した自転車を組み立てて元町港へ。昨年のリハーサル大会できたときに激しく寒かった記憶があったけど、暖冬の影響なのかそれほどでもない。

岡田港から元町港へ抜けるにはいきなり平均10%近い坂を登ることになる。ピークの郵便局のある場所まで途中少し緩やかにはなるけれど、港からの1.4kmの勾配は平均7%程度はある。寝起きではあるけれど気持ちに任せて登っていく。

一度登ってしまえば、途中ゆるやかな登り返しがあるだけでほぼ下り基調で元町港までたどりつける。

途中からコースの一部になっていていたるところに案内があり、メイン会場の大島支庁の前にはすでに表彰台の準備もできていて現地に来たことを実感する。

 

まだ朝早いのでいったん港まで下りきって、すぐそばの「おともだち」というお店へ。ここは朝6:00から営業しているので昨年も立ち寄ったところ。朝定食の中から焼き魚定食を注文してまずは腹ごしらえ。

マスターにいろいろと昨日までのタイムトライアルの模様について聞かせていただく。現地でも交通規制以外の情報がないようで、誰が走っているのかわからないという。島内で配布されているフライヤーを取り出し、

「この人は走っていたけどねえ。」

と、萩原選手の写真を指差してくれる。嬉しくなってつい無駄にしゃべってしまう。

 

元町港の待合室のコインロッカーにカメラ以外の荷物を預けて、ちょっと早いけど再びメイン会場のほうへ。

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お手製の応援バナー。

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電柱には距離表示の他、選手がボトルやゴミなどを「置ける(レギュレーションに従ってそう表現するけれど)」グリーンゾーンの表示やフィードゾーンの表示が出ていたり。

平日の金曜日の朝なので、通勤の車や通学の小中高生が日常として通り過ぎるのを眺めながら時間をつぶす。全ては見れないけれど、交通規制をして行われるレースの準備の様子に少しだけお祭りのような雰囲気を感じながら通り過ぎている。

 

きょうはIDカードもないただの観客である。あくまでも観客の目線でしか見れないけれど、それ故の気楽さみたいなものもある。気楽さの継続のためにはID規制されたエリアの中のことを気にしないでおくのが一番だと思う(そして無駄に近づかないことも)。

 

設営も終わり、最初のレースは女子ジュニア。

何故わざわざ有給休暇を取得してまで金曜日から来たのかというと、ジュニアのレースを一度観戦しておきたかったから。将来の輝きのきっかけがきっとあるに違いないと思ったから。

コースは1周11.9kmで、71.4kmなので6周回。

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定刻にスタート。

スタートしてすぐに右折して車一台がやっとの細い登りへと入るので、そこのわずかなスペースで最初は見ることにした。1周目が終わって選手が来るアナウンスが遠くに聞こえる。

規制予告の先導車に続いてキャラバンの隊列が続く。レースディレクターカーやモト・コミセール、ニュートラルサービスが過ぎて最初に現れたのは台湾の選手ともうひとりは日本ナショナルチームジャージ。

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現地でもインターネット上の大会サイトで配布されているコミニュケ以外には誰が出走しているのかはわからないけれど。どうやらChang Ting Ting選手と下山美寿々選手の模様。

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続いてタイのChaniporn Batriya選手とウズベキスタンのOlga Jantuganova選手が追う。

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そして香港チームを中心に集団には細谷夢菜選手。

この時はまだ下山選手の力を知らなかったので「いきなりのアタックはどうだろう」と思いながら、キャラバンが全て通過したのを見計らって、海沿いのパームラインまで自転車で移動する。裏道をつかえば御神火温泉の脇まで出られる。

2周目の終わりに間に合った。問題なく先頭は二人でローテーションをしている。後続は一度捕まったのか、タイの選手と香港の選手の二人になり、その後ろが集団。

3周目はパームラインのピークのあたりへ移動して見ていたけれど、下山選手のほうが引いている雰囲気。続く4周目は元町港の手前まで戻って見ていたけれど、下山選手のほうが前へ出たがっている雰囲気すら感じる。頼もしい。

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そこまで見終わったところで、残り周回数も少ないので5周目はフィードゾーンを過ぎたフィニッシュライン200m手前まで戻って見たけれど、ここでも余裕が感じられる。そして集団とのタイム差を大きく広げている。

Chang選手は女子ジュニア個人タイムトライアルで優勝しているのでかなりの脚力はあるはず。

そしてフィニッシュラインへ再び戻り再度の勝負を見届ける。途中で大きくばらけることなく最後はスプリント勝負だったけど、下山選手が先着して優勝。集団とは6分以上も開けてきた。

そして逃げていた二名を吸収して集団もスプリント勝負だったけど、こちらも細谷選手が脚力を生かして3位。

そして表彰式へ。

表彰のアジアチャンピオンジャージに勝者が袖を通す瞬間を目の前で見れたことも素晴らしかったけれど、国旗掲揚君が代が流れると、ああこれが国際大会なんだな、と実感する。

これだけれでも来てよかったと思う。

 

もうお昼近い。

すぐに今度は男子ジュニアのレースが始まろうとしているのだけれど、飲食のブースが何もなく食事に困ってしまった。次のレースも全て追いたいので空腹を我慢してスタートの様子を撮影するために移動する。

その3へ続く)