着衣規定に思うこと―2014年・冬の続き

きょうは先日のエントリー 着衣規定に思うこと―2014年・冬 - takeoekuni's diary の続きになります。
少しヒントがあって見えてきたものがあるので、そんな話を書きます。

UCI Article 1.3.033についてもう少し調べていました。海外でも寒い中、ニーウォーマーを外すように言われた事例がありました。

Silly rules - General Forum - CC Forums

リンク先は日本の状況と似ている雰囲気ですね。

また、とあるSNSのとあるところで同じ1.3.033について話題になっていましたが、実際に審判資格をお持ちでUCIレースを裁いている方から、「この規則は規制するのではなく、認めるための規則なんです。」というコメントがありました。

また、これは海外の過去のフォーラムで1.3.033について盛り上がっているところに「柔軟性をもたせていると」いうコメントもありました。

No it's written to give the commissaires full flexibility. And overshoes are considered non-essential. Glasses are a safety aspect, the colour of lenses is incidental.BikeRadar.com • View topic - a few road racing clothing questions 

 UCI Regulations Article 1.3.033についてはいくつかの変遷があるようです。「(text modified on 1.01.02; 1.01.04; 1.04.07; 1.10.10; 1.02.12).」と注釈がありますが、2002年と2004年と2007年と2012年に改訂されています。

古いUCI RegulationsがいくつかWEB上にありました。

2002年の改訂の際は「ロードレースにおいては衣類と上着について」とあります。この時点では"over-garments"という表記がありました。

During road races, clothes and over-garments may be essential items insofar as weather conditions suggest this. In this case, the nature and texture of the apparel must be clearly and solely justified by the need to protect the rider from bad weather conditions. The judgment is left to the race commissaires.

2004年版では"over-garments"が無くなり「ロードレースに加えてマウンテンバイクにおいては天候の観点から」となっていました。

In road and mountain bike races, items of clothing may be considered essential where weather conditions make them appropriate. In this case, the nature and texture of the clothing must be clearly and solely justified by the need to protect the rider from bad weather conditions. Discretion in this respect is left to the race commissaires.

そして最新2014年版での表現はロードレースとマウンテンバイクだけでなく、全ての競技で適応できる表記へと移っています。

Items of clothing or equipment may be considered essential where weather conditions make them appropriate for the safety or the health of the rider. In this case, the nature and texture of the clothing or equipment must be clearly and solely justified by the need to protect the rider from bad weather conditions. Discretion in this respect is left to the race commissaires.

over-garments(上着)"という表現による不都合が生じたため、現時点ではあらゆる付加物について柔軟性のある規則に変遷していった感じがします。

もしもアームウォーマーやレッグウォーマーと明言すると、今度は具体的に使えるものと使えないものの技術的観点が必要となると思われます。この項目の前にあるコンプレッションやエアロダイナミクスについての禁止事項や、この後に続く電子デバイスに関する禁止事項などのように細かい規則が必要となり、規則によって規則が縛れてしまう方向になりそうです。

そして"Discretion in this respect is left to the race commissaires."とあるように現場判断で行えるのは元々融通がきく運営ができる仕組みでもあります。

少しすっきりしました。

私はコミセールの資格は持っていませんが、ここでコミセールの視線で考えてみます。コミセールが優先するべきことは「安全と公平性」です。

"weather conditions"とはありますが、具体的な気温について明言されてはいません。さじ加減なところではありますが、仮に一人でも外せる人があれば、公平性の面からすれば「外せるもの」という考えができます。

日本のコミュニケにある「許可する(許可しない)」というのは「禁止」を前提とした含みがあり語弊が感じられます(極論すれば、グローブもミトン状のものが禁止されている以外は、規則上は明言されていないため付加物となり得る危うさがあります)。

 より中立な考え方から、

「すでに気象条件からは不要と思われるので、公平性の観点から外しなさい。」
と言われれば「仕方がないかな」という感じで指示に従えるような気がします。

いままで走ってきた現場で見た中では、審判は権威だから「これは絶対命令だ」みたいな方向で注意される時があるので、なおさらこじれるのではないかと感じます(「コミセール」というのは日本の競技規則に定められる「審判」とは若干異なるニュアンスがありますが、そのあたりはまた別の機会に)。

レースやトレーニングの中で感じるのは季節的には春先の、気温が10℃未満のあたりが微妙なところでしょうか。雨でなければ外したほうが脚の動きに影響が少ない時もあるので常につけたいわけでもありません。

この件については私の中では一旦終わりにします。最後はコミセールの判断であり選手はそれに従うだけなのですが、よりよい判断と指示を望むところです。

追記

UCI Regulations PART 12 "DISCIPLINE AND PROCEDURES"に含まれるペナルティ表には

3.1 Wearing of non essential items (art.1.3.033)
必須でないものを着用する(1.3.033条)

 について

start refused(スタートは拒絶される)

というのがあり、これが転じて「禁止」という言葉になったと思われます。