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エリスロポエチンについて調べていました

たび重なるEPOによるドーピング違反で、自転車競技が10年間も歴史を失う結果に至り、ついうっかりEPOという存在を悪者に例えがちですが、何か大切なことを置き去りにしている気がしてならないと思いませんか。

そもそもEPOってなんなんだろう、ということでここしばらく調べていました。

正式にはエリスロポエチン、赤血球産生を促進する糖タンパクホルモンで、主として腎臓で産生されます。元々ヒトの身体に存在するものです。

その存在は100年ぐらい前からわかっていたようですが、そう呼ぶことを提唱したのは日本人・東京医科大学の小宮悦造教授でした(1936年のことです)。

そして慢性腎不全などによる腎性貧血を解決するためEPOの生成が研究されましたが、実際に生成することは難を極めていました。そしてそのきっかけを作ったのは熊本大医学部の宮家隆次先生でした。宮家先生は同大学の附属病院に入院されている再生不良性貧血患者の尿に注目して、その集めた2.5トンもの尿を精製して、米・シカゴ大学のゴールドワッサー教授の協力のもと、10ミリグラムのEPOを精製することに成功しました。

その後、そのサンプルを元に米・アムジェン社が組替えDNA技術で1983年にその遺伝子配列を決定し(同じく宮家先生のサンプルから他社が開発しましたが、アムジェン社が特許を得ました)、商品化へと結びつきました(皮肉なのはアムジェン社が自転車レース「ツアー・オブ・カリフォルニア」をサポートしていることでしょうか)。

その後、糖鎖を付与した持続性のある改良型のものが登場しました。

日本では協和発酵キリンが「エスポー」や「ネプス」、中外製薬が「ミルセラ」という商品名で販売しています。

さらに今年に入って香川大学京都大学の共同でヒトiSP細胞からエリスロポエチン産生細胞を産生することに成功しました(今のEPOはマウスを使っての産生です)。

 

そして覚えておいて欲しいのは、EPOが誰のためのものだったかということ。

慢性腎不全で日々人工透析を受け、それでもいろいろと改善せず貧血でEPOを必要としてされている方がいます(自転車に乗ることだってままならないのに)。

そんな方々の日々の戦いを思えば、とてもじゃないけどそれを「ズル」のために使おうとは思えない。

そこまで想像力が欠如してしまってどうするのだろう、と思うのです。

 (写真はWIKIMEDIA COMMONSより)

 

今回のエントリーにあたり、下記を参考にさせていただきました。

序 ~“エリスロポエチンによる貧血改善がもたらしたもの” -企画者として-~:医薬ジャーナル社, Iyaku(Medicine and Drug)Journal Co., Ltd. http://www.iyaku-j.com/iyakuj/system/dc8/index.php?trgid=10215

東京医科大学内科学第一講座 http://www.tokyo-med.ac.jp/int1/rekishi.html

朝日新聞デジタル:尿2.5トン 執念で宝物に 透析患者救うEPO - おすすめ記事〈サイエンス〉 http://www.asahi.com/science/intro/TKY201203180178.html

透析百話: 1-2)エリスポエチンを巡って http://touseki-hyakuwa.blogspot.jp/2010/03/blog-post_671.html

香川大学 :: ヒトiPS細胞からエリスロポエチン産生細胞の作出成功 http://www.kagawa-u.ac.jp/topics/education/ips/

エリスロポエチン物語|HDFって? もっと透析のことを知って欲しい Dr.シモンのオンライン長時間透析室 http://ameblo.jp/simonkei/entry-11012514625.html

エリスロポエチン遺伝子の発現制御 http://www.dmbc.med.tohoku.ac.jp/cgi-bin/project3/view.cgi