2017年のUCIウィメンズ・ワールド・ツアーのカレンダーから


2017 UCI Women's WorldTour

以前から女子レースのことについていろいろと言及してきましたが、UCIのサイトに2017年のカレンダーが出揃ったので個人的に整理するために書き出してみます。

 

今回はウィメンズ・ワールド・ツアーについて。ウィメン・エリートのクラス1とクラス2のレースについては扱う範囲が広がるため、別の投稿でフォローします。

 

まずロードレースのウィメン・エリート(以下WE)というカテゴリーから。規格は男子コンチネンタル・チームと同じ。

8名〜16名の「チームの構成員としてUCIに登録された競技者」と契約された選手と、チーム代表者,スポンサーおよび,チーム代表者および・またはチーム・スポンサーによって契約されたその他のチームの継続的な活動を促進するすべての人(管理者,チーム監督,コーチ,その他)で構成。そして銀行保証も必要。

(詳細はUCI競技規則"PART 2 ROAD RACES Chapter XVIIREGULATION FOR WOMEN'S AND CONTINENTAL TEAMS"に規定されている通り。)

なお、WEチームに所属する日本人選手は存在するものの、現時点ではWEチームは日本には存在していません(ナショナル・チームについては形態が異なるためここでは分けておきます)。

 

そしてWEカテゴリーを対象としたレースとして2015年まではCoupe Du Monde(ワールド・カップ、以下CDM)が開催されていましたが、賞金金額の基準を上げ、以前のCDM格のレースにいくつかのレースを格上げして対象レース数を増やし、昨年(2016年)からウィメンズ・ワールド・ツアー(以下WWT)として年間のシリーズ戦として開催されるようになりました。

シリーズ戦として各レースごとの個人の総合ポイントでの年間表彰が行われます。そしてポイントリーダーにはリーダージャージ。昨年の優勝はメーガン・ガーニア選手。最優秀ヤングライダーはカタジーナ"カシア"ニアドーマ選手。

 

以下は今年のWWTカレンダー。全部で21レース。

ウィメンズ・ワールド・ツアー(WWT)

  • 3/4 ストラーデ・ビアンケ(イタリア)1.WWT
  • 3/11 ウイメンズ・ワールド・ツアー ロンド・ファン・ドレンテ(オランダ)1.WWT
  • 3/19 トロフェオ・アルフレッド・ビンダ - コムーニ・ディ・チッティーリオ(イタリア)1.WWT
  • 3/26 ゲント - ウェヴェルゲム(ヘント - ウェヴェルヘム)・イン・フランダース・フィールズ(ベルギー)1.WWT
  • 4/2 ロンド・ファン・フラーンデレンツール・デ・フランドル(ベルギー)1.WWT
  • 4/16 アムステル・ゴールド・レース(オランダ)1.WWT
  • 4/19 ラ・フレッシュ・ワロンヌ・フィミーヌ(ベルギー)1.WWT
  • 4/23 リエージュ - バストーニュ - リエージュ・フェム(オランダ)1.WWT
  • 5/5 ツアー・オブ・チョンミン・アイランド・UCI・ウィメンズ・ワールド・ツアー(中国)2.WWT
  • 5/11 アムジェン・ブレイカウェイ・フロム・ハート・ディジーズ・ウィメンズ・レース・エンパワード・ウィズ・スラム(アメリカ)2.WWT
  • 6/4 フィラデルフィア・インターナショナル・サイクリング・クラッシック(アメリカ)1.WWT
  • 6/11 ウィメンズ・ツアー(イギリス)2.WWT
  • 6/30 ジロ・デ・イタリア・インターナチオナーレ・フェミニーレ(イタリア)2.WWT
  • 7/20 ラ・コルセ・バイ・レ・ツール・ド・フランス(フランス)1.WWT
  • 7/29 プルデンシャル・ライド・ロンドン・クラッシック(イギリス)1.WWT
  • 8/11 クレセント・ヴォールゴーダ TTT(スウェーデン)1.WWT
  • 8/13 クレセント・ヴォールゴーダ(スウェーデン)1.WWT
  • 8/17 レディース・ツアー・オブ・ノルウェーノルウェー) 2.WWT
  • 8/26 グランプリ・ド・プロエ - ロリアン・アグロメラション(フランス)1.WWT
  • 8/29 ブールス・レンタル・レディース・ツアー(オランダ)2.WWT
  • 9/10 マドリード・チャレンジ・バイ・ラ・ヴエルタ(スペイン)1.WWT

※カタカナ表記は現地発音に近い表記を優先。カレンダー上での表記が開催地の言語とは異なる場合も多く、ベルギーなのに英語の大会名で登録されていたり、ベルギーなのにフランス語で大会名が登録されていたり(ベルギー南部はフランス語圏)。なるべくそれぞれの言語でのカタカナ表記にしました。一番の鬼門だったのは"Wevelgem"で、「ウェヴェルヘム」で通ちゃってますが、実際にそんな発音になる言語は存在しないため英語読みの「ウェヴェルゲム」と補足的に一般的な「ウェフェルヘム」を表記しました。
(1/6追記)実際にベルギーで生活をされていた@yokoroboさんから、現地では"v"は"f"で読んでいないことを教えていただきました。「ウェヴェルヘム」に訂正致します。調べていてたどり着いた発音ファイルはベルギー人ではなくオランダ人が発音したもののようでした。

 

大会名の後ろの1.WWTがワンデイ・レース、2.WWTがステージ・レースです。

ざっと見た限りだと春まではいわゆるクラッシックでイタリアとベルギーとオランダを回ってアメリカに行くあたりまではひと区切りなのは変わらず。

今年からツアー・オブ・カリフォルニアはスラムが大会スポンサーについて、名称がアムジェンのスローガン的なものになっているが、ステージレースであることには変更は無いようです。

 

参加するチームは、女子については男子のワールド・ツアー・チームに相当する括りがないため、開催年の最初のWWTランクング上位20のチーム(ワンデイ・レースの場合、ステージレースは15チーム)が最低限の招待の対象となります。その他は大会ごとのWEチームとナショナル・チームが対象。

(1/10追記)上位20チーム(1月8日付けランキング)

  • ブールス・ドルマンス・サイクリング・チーム Boels Dolmans Cycling Team(DLT)(オランダ)
  • ウィグル・ハイファイヴ Wiggle High5(WHT)(イギリス)
  • WM3・プロ・サイクリング・チーム WM3 Pro Cycling Team(WM3)(オランダ)
  • チーム・サンウェブ(SUN) Team Sunweb(オランダ)
  • キャニオン・スラム・レーシング Canyon Sram Racing(LPR)(ドイツ)
  • オリカ・スコット Orica Scott(ORS)(オーストラリア)
  • サーヴェロ・ビグラ・プロ・サイクリング・チーム Cervelo Bigla Pro Cycling Team(CBT)(ドイツ)
  • アレ・チッポリーニ Ale Cipollini(ALE)(イタリア)
  • サイランス・プロ・サイクリング Cylance Pro Cycling(CPC)(アメリカ)
  • チーム・ヴェロコンセプト・ウィメン Team Veloconcept Women(TVW)(デンマーク
  • ビーピンク・コジアス Bepink Cogeas(BPK)(イタリア)
  • ハイテック・プロダクツ Hitec Products(HPU)(ノルウェー
  • ラレス ・ワオディアルス・ウィメン・サイクリング・チーム Lares - Waodeals Women Cycling Team(LWD)(ベルギー)
  • レンズワールド・クオータ Lensworld-Kuota(LWD)(ベルギー)
  • FDJ・ヌーベル・アキテーヌ・フューチャロスコープ FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope(FDJ)(フランス)
  • BTC・シティ・ルブジャーナ BTC City Ljubljana(BTC)(スロベニア
  • ロット・ソーダル・レディース Lotto Soudal Ladies(LBL)(ベルギー)
  • アスタナ・ウィメンズ・チーム Astana Women's Team(ASA)(カザフスタン
  • チーム・ティブコ・シリコンバレー・バンク Team Tibco - Silicon Valley Bank(TIB)(アメリカ)
  • セルヴェット・グスタ Servetto Giusta(SER)(イタリア)

 

昨年は実際にWWTとしてのレースを確立できていたのは上位5チームぐらいでしたが、選手の移籍がどうでるのかが気になるところです。

 

最後に肝心の観戦の話。

日本での開催がないため、観戦するには現地へ赴くか(一番近いのは中国の崇明島でしょうか)、ありとあらゆる方法でストリーミングを見つけてきたり、ツイッターの断片的な情報を集めたりになりますが、それゆえの面白さみたいなものがあります。

英語がある程度わかれば、自動翻訳を頼りにかなりの情報を得ることが出来ると思います。

特にサラ・コノリー(Sarah Connolly)さんの"Unofficial Unsanctioned Women's UCI Cycling Blog | A sweary blog about professional women's cycling"には、ほぼ全てがまとまっています。

映像に関してはUCI側で大会ごとのダイジェストをYouTubeにアップされています。また昨年はJ Sportsで放映されている"In Cycle"という番組でも各大会のダイジェストと注目選手のインタビューを放映していたのでこちらも楽しみにしておきたいところです。

UCIのウェブサイトの中にWWT各大会へのリンク集ページも出来ました。こちらもご参照ください。

Road - UCI Women’s WorldTour 

ペナルティ・スケールについて

国際自転車競技連合(以下UCI)の競技規則のうち、「PART12 DISCIPLINE AND PROCEDURES(懲戒及び手続き)」の項目について、個人的に整理してみる試み。

(日本自転車競技連盟(以下JCF)によるUCI競技規則の日本語版はこちらから。

ペナルティの種類

  1. 警告・譴責
  2. 降格
  3. タイムペナルティ
  4. 罰金
  5. 賞金の没収
  6. スタートの拒絶
  7. 失格
  8. 除外
  9. 懲戒
  10. 資格停止(ライセンスの失効)
  11. ポイントランキングの無効
  12. 大陸選手権・オリンピックからの排斥

不公平な事象に対して、そして自転車競技の品位を下げる行為に対してのペナルティを大別するとこのあたりになります。

除外までは主に競技中への出来事への適応。さらに罰金が200CHF未満については異議申し立てが不可(12.1.012参照)。

それ以上の厳しい懲戒についてはいわゆる倫理観に則したもので「UCI内の所管は,スポーツ倫理,モラル,または自転車競技に対する忠誠心に基づいて課される義務を満たさぬ者」を対象としています(12.1.025参照)。

 

そして罰金の行方ついて。

たぶんこのあたりも疑問を持たれている方は多いと思いますが、「競技中の罰金は主催者の所属する国内連盟に」「当該ライセンスを発行した国内連盟に」とあります。そして「その他の罰金はUCIが受け取り,その銀行口座に直接支払われるものとする.」とあります(12.1.013参照)。

UCIでは罰金について非経常なものとして扱っています。2015年の年次報告書では約3800万円(CHF 333,000)、2014年は1億1,200万円(976,000CHF)にものぼっています。2014年との差異についても言及されていますがそのあたりについてはこのエントリーの本筋から外れるのでまた別途。

UCIの年次報告書はこちらから。

 

もしも選手が守るべき規則があるとすれば、「これらの対象となる行為を行わない」ということでしょうか。

5月は606km

明日は雨のようなので今月の総括を。

走行距離は606kmで先月それとなく書いた目標を達成できました。数値的にも少し上がってきて4W/kgに近づいてきたので悪くはない感じ。散々さぼったツケを取り返すには時間がかかるけれどその遅れも楽しめればいいかな、と思います。

6月は梅雨の季節。ここ数日の天気からするとたぶん早めに雨の続く日がありそうなので乗れる日に乗る流れでしょうか。インターバル的なこともやってみたいと思います。

 

きょうは久しぶりに品川方面へ。そして気がついたこと。

「自転車ナビマーク」を導入しました 警視庁

最近道路の左側に自転車の進む方向を示したペイントがあるけれど、果たして機能しているのだろうかと。

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ナビマークの先にパーキングメーター。それでもご丁寧にパーキングメーターの間隔の広いところにはナビマークがペイントされていて、今回の政策は道路の設計まではフォローしきれてないことをそれとなく把握しました。

道程は長いけれど、次はこのあたりが少し進化するとよいなあ、と思いました。

4月は

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4月の走行距離は300km程度。選手としては話にはならないですが、コンスタントに4週続けて乗れました。

3月後半まで内面的にきつくまったく乗れる余裕がなかったのですが、少しだけ時間の調整が出来たのと、気候がよくなってきたのに助けられた感じです。

レースにはまた程遠いですが5月の走行距離が600km程度になればよいな、と思っています。

 

きょうは入間大橋まで往復しました。

連休に入って荒川サイクリングロードでたくさんの自転車乗りとすれ違いながら思ったのは、いわゆるサイクリングとして公道を走る際に必要な要素として、確実に止まれるということが一番重要なのかなあ、と。

そのあたりについて資料の準備が出来たら書いてみたいと思います。

再び伊豆大島に思いを馳せる

4月に入って気候も落ち着いてきたので少しずつ自転車に乗っています。

 

今年のブログのエントリーは伊豆大島の話に偏っていますが、再び書いてみたいと思います。

全日本自転車競技選手権大会ロードレースも伊豆大島での開催となり、出場権とは程遠い私にも気になる観戦ツアーが募集されています。

第85回 全日本選手権自転車競技選手権大会ロード・レース | 国際興業トラベル

 

伊豆大島について気にしているうちにいろいろと気がつくことがありました。

下の画像はGoogleマップによる空中写真ですが、元町の南側に緑の少ない部分があることに気付くと思います。

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泥流により、

死者:35名
行方不明者:4名
住家被害(全壊)46戸
住家被害(半壊)40戸 

という大きな被害が出た箇所は今でもそのまま残っています。台風の被害の詳細は下記のリンク先をご参照いただければ幸いです。

【2013年11月12日】 平成25年台風第26号伊豆大島の土砂災害の概要 - 国土交通省庁[PDF]

 

6月に開催される全日本自転車競技選手権大会ロードレースの宿泊に関しては、この台風の被害による伊豆大島復興支援助成金によるサポートがなければ成り立っていないように感じます。

補助金についてはよい捉え方をされない傾向がありますが、少なくともこの衛星写真を見るかぎりはそういった個人的な感想はどうでもいいような気がします。

 

そして今年の1月に開催されたアジア自転車競技選手権大会ロードレースについて伊豆大島の広報紙「広報おおしま」2016年度3月号にこのような記載があります。

大会開催に際し長期間・長時間の交通規制を実施したため、コース周辺 の住民の皆様、事業者の皆様に大変ご迷惑をお掛けしました。また、交通 規制等の周知が不十分であったことも併せてお詫びいたします。本大会は大島で初の国際大 会であり、多くの外国の方々が来島したため、一部の国のマナーの悪さや交通ルールを遵守できない等 の問題が発生し、外国人の受け入れの難しさを痛感しました。今後は、本大会での問題及び経験を基に 大会実施方法を再検討し、6月開催の全日本自転車競技選手権大会に備えていきます。 コース周辺住民の皆様、事業者の皆様、大島町民の皆様、ご協力ありがとうございました。

 

ここ数年の流れを見る限り、公道で開催されるロードレースが縮小傾向にあることを踏まえると、日本においては環境負荷の高い出来事のように感じます。

6月の全日本自転車競技選手権大会ロードレースでは、島外から訪れる選手も観客も、島内の方にとってよい出来事となるような努力が必要なように感じました。

 

 

アジア自転車競技選手権大会トラック競技観戦紀行

アジア自転車競技選手権大会、ロードレースの翌週はトラック競技。さすがに平日の休暇の取得はもう無理なので、せめて土曜日だけでも、ということで修善寺日本サイクルスポーツセンターに行ってきました。

前回のロードレース観戦紀行の続編的になりますがお読みいただければ幸いです。

 

1月30日。

今回の旅は品川駅4時35分始発の東海道線の鈍行でスタート。

開場時間に間に合うようにたどり着くには、この列車に乗るか前日に現地に宿泊するしかない。さすがに毎週宿泊は無理なので列車の旅を選択。

ほぼ全部を居眠りで過ごしたので体感乗車時間はほんのわずかのように感じる。そして熱海駅で最初の乗り換え。熱海以西はSuicaが使えないので一度改札を出て切符を買い直す。

そして三島駅伊豆箱根鉄道に乗り換え、こちらも居眠りしていたのであっという間に修善寺駅に到着。駅構内に今回のアジア選手権のバナーや駅前にものぼりが立っていて盛り上がってくる。

駅から日本サイクルスポーツセンターまでこの大会のために運行されるシャトルバスもあるのだけれど、開演前にたどり着きたかったのでタクシーを拾う。タクシーの運転手とアジア選手権についてあれこれと世間話をする。

 

到着。無事に一番乗り。

車で観戦に来られている方もいるようだけれど、寒いので車内で待機しているようだ。ずっと冷たい雨が降っている。標高400メートルぐらいあるのでかなり寒いがなるべくよい場所で観たいので外で待つ。

シャトルバスも到着して徐々に列が出来てきた。まだしばらく時間があるけれど静岡県自転車競技連盟の松村理事長が出てこられて、
「本日の開場時間は8時30分を予定しておりますが、寒い、早く中に入りたい、ワクワクが止まらない、などの理由により10分早めます。今しばらくお待ち下さい!」
とアナウンス。素晴らしい!ありがとうございます!

 

時間になり中に入ると目当ての席を確保。中は暖かく、Tシャツでも大丈夫なほどだ。入口へ戻り大会限定の記念品を買いに行く(実際に走路に使われているシベリア松で出来た木材の切り出しに記念の烙印が押されている)。

 

競技開始時刻までは練習走行の時間で各国の選手が周回を繰り返している。入口でパンフレットも貰ったのだけれど、変更になったプログラムは反映されていないので何をやるのはわからない(IDの無い観客側のエリアには紙に書かれたものでの情報はない)。

スマートフォンで公式サイトで公開されているコミュニケを確認してなんとか把握する。大きく大別すると以下の種目になる模様。

  • 男子ジュニアスプリント
  • 男子エリートスプリント
  • 男子エリートマディソン
  • 女子ジュニアケイリン
  • 女子エリートケイリン
  • 女子エリートオムニアム

スプリントはトーナメントとなるためレース数も多いが短時間で終わるので、スプリントの合間にケイリンやオムニアムのポイントレースやマディソンを挟む感じで進行するようだ。

昨年、全日本選手権オムニアム大会の一部を観戦したけれど、トラック競技はどの席からも全ての走路が見渡せるため、競技を間断なく観戦できるのがいい。特に伊豆ベロドロームは屋内競技上だから観戦とは書いてもロードレースとはまた別の、歌舞伎や演芸などを観に行く感覚に近いように個人的には感じている。 

 

ホームストレート側のエプロンの近くなので、選手がホルダーに支えられて走路に出てくるところから楽しめる。

 

男子ジュニアスプリント、1/4決勝の中島詩音選手と伊藤歩登選手。

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スプリントは1対1で短時間の間に駆け引きを経て、一番でフィニッシュラインを通過すれば勝ちという最もシンプルな種目。わかりやすい分興奮できると思う。

 

そして大型ディスプレイにそれぞれの種目の開始前に案内が出るが、文字が小さく読みずらい。しばらくすると場内のカメラの映像に切り替わってしまうため、誰が走っているのかが時々わからなくなる。

アナウンスもあるのだけれどほとんど聞き取れない。P.A.の位置がよくないからだろうと思う。照明と同じ高さから下向きにスピーカーを吊るしているけれど、天井との間にかなりの隙間があるので音が向かってきていないような。

 

女子ジュニアケイリンで今週も細谷夢菜選手を応援。

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見事1位で予選通過。来場者も増えてきていて大きな拍手が起こる。

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競技はどんどん進行していく。走路がクリアになればすぐに次の種目の準備が始まる。

 

中にはやや複雑な種目もある。今回観た中ではポイントレースとマディソン。

オムニアムのポイントレースは総合順位を決めることもあり、ポイントが付く周回までの展開と何でポイントを獲るかの選択で駆け引きがあるので目が離せない。今回は25キロメートルだから100周回重ねることになる。

スタートはフライングスタートで最初は走路の内側と外側に選手が並ぶ。一番前の席にいると目の前に選手が並ぶことになる。上段の席のほうが全体を見渡せやすいけれど、この選手が間近に来る感覚のほうが実は好きだったりもする。

今回の間近で見る選手はカザフスタンのNadezhda Geneleva選手。

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お昼近くになりほぼ全席が埋まって立ち見が出るほど。素晴らしい。

地元の方は入場無料になったようだけれど、じゃあタダだったら行ってみようか、とは単純にならない気がする。興味があるから足を運んでいるのだと思う(東京オリンピックがどのようになるか全くわからないけれど、観客席を増やしても全て埋まりそうな気がした)。

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ポイントレースはポイントのある周回のスプリントのあと選手が走路に広がっていくところの動きが好きだ。

 

日本ナショナルチームは塚越さくら選手が出走。すぐそばに鹿屋体育大学のファンの方がいるので「さくらー!」と声援が飛ぶ。そしてポイントを獲れば皆で大きな拍手をして盛り上がる。

上手くポイントを重ねて総合で3位に入った。

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オムニアムの中のポイントレースは総合順位に影響するので逆転を狙ってくる走りがあるので観ていて盛り上がる。

 

そしてまたスプリント。男子エリートの中でひたすら魅力的な走りをする選手がいる。マレーシアのMohd Azizulhasni Awan選手。

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彼は必ずフェンス側を走り観客にアピールする。目の前で駆け引きをされたらそれだけで展開から目を離せなくなる。この1/2決勝では韓国のIm Chaebin選手のほうが強かったけれど、ほぼ全てのレースで必ずフェンス間際までくるAwan選手は圧倒的に魅力度が高く、その後の競技でも彼が走ると開場全体が湧くほどである。

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女子エリートケイリン。自分の座っている少し後ろ側の席は日本ナショナルチームのジュニア選手が何名かいる模様で声援が聞こえてくる。

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女子エリートケイリン前田佳代乃選手が出てくると、後ろのほうから「ま・え・だ!ま・え・だ!」と大きなコールが。松村理事長が席までいらしていていっしょに盛り上げてくれている。

 

午前のレースだけでお腹いっぱいな感じである。休憩時間もそこそこに午後の競技が始まる。

きょう一番の目的の男子エリートマディソン。今までインターネット上の動画のみでの観戦であったけれど、いよいよ生で観られる。 100周回を各チームが二人で交代しながら競う。

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日本は原田裕成選手と新村穣選手。

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7チームで14名の選手が走路にいて、選手が入れ替わり走路の途中にも選手がいるからいきなり見ると何がなんだかな状況になってくるけれど、ラップ・カウンターを勤めるコミセールのうち二人が常に先頭を指で追っているのでそこを観ていれば先頭だけは把握できる。

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各チームがタイミングを合わせてタッグを組み交代していく。

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日曜日に伊豆大島の男子エリートロードレースで優勝したCheung King Lok選手が今日はLeung Chun Wing選手とペアを組んで上手く先頭で周回を重ねている。

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 最後は韓国と香港によるスプリント。

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Cheung選手がガッツポーズをして香港チームが優勝!

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 …だったのだけれど、しかし。判定の結果、僅差で韓国が先着していて韓国が優勝でした。無茶苦茶嬉しそうだったのだけれど、残念。

 

そして韓国が強い。

男子ジュニアスプリントはJeong Yunhyeok選手とKim Chengsu選手が1位2位決勝を走りJeong選手が優勝を決めた。

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そして男子エリートスプリントも優勝は韓国のIm Chaebin選手。2位は中国のXu Chao選手。

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案外話題にはなっていないけれど、今のアジアの自転車競技を統括しているのは韓国だ。アジア大陸自転車競技連合の本部は韓国にある。会長のCho Hee Wook氏はUCI副会長の経験もある。

韓国では近年、スイスのUCI World Cycling Centreで選手の強化も行っている話も耳にする。

 

最後の種目は男子エリートスプリント3位4位決定戦。再びAwan選手の登場。中国のBao Saifei選手との対戦。Awan選手が仕掛けた瞬間に場内から再び大きな歓声が!

先行したAwan選手が勝った。大きな拍手が沸き起こる。

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そしてAwan選手が魅力的なのはのは戦った相手に必ず敬意を表すところだ。

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さらにもう一周して観客とハイタッチ。この写真を撮ったあと、すぐに手を差し出したら見事にハイタッチしてもらえた。思い出がまたひとつできてとても嬉しい。

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最終日なのでトラック内のフィールドではどんどんと機材の梱包が始まっている。カザフスタンの選手は先に梱包が終わって時間が出来たようなので、テニスボールのようなものを皆で蹴って遊んでいる。少し間があり、表彰式へ。全ての競技が終了した。

 

表彰式を眺めながら、先週に引き続き今週もお会いした観戦仲間の方にごあいさつをして開場を後にした。

これでアジア自転車競技選手権大会は全て終わり。外には各国の選手団を成田空港まで送迎するバスと機材を運ぶ大型トラックが数台待っている。終わる寂しさではなくたくさんのものを2週間かけてじっくりと観た中で得たものへの感謝のほうが上回っていて、満足げに心の中で手を振った。

駅までの帰り道はシャトルバスでのんびりと。修善寺駅で後からきた家族と待ち合わせて修善寺温泉で一泊して、ゆっくりしてから翌日帰路についた。

 

この日観た全ては書ききれなかったけれども、特に印象に残った部分を中心に書いてみました。そしてまたベロドロームに観戦に行きたくなったのでした。

長々となりましたがお読みいただきありがとうございました。

アジア自転車競技選手権大会ロードレース観戦紀行・その6

その5からの続き)

いろいろと最低な土曜日の夜。それでも朝になれば日曜日。一度目が覚めたところで電気を消して少しでも寝ることにする。

 

1月24日。

寝足りてない感じもするけれどスマートフォンのアラームに起こされる。出かけた日と同じように全ての荷物をパッキングして、宿の方にお礼を言って暗いうちに元町港に向かう。

風は強いけれど目の前の大きな月に励まされる感じがする。こうした風景は写真には納まりにくいので心のシャッターを切って胸に焼き付けておく。

上陸した朝と同じように再び「おともだち」へ。ここでの朝食が一番落ち着く。

マスターとまた世間話をする。しばらくすると観戦のために今朝着いた船で島に着いた方が数名来店される。たぶんではあるけれど知り合いの知り合いぐらいの方のようで心強い。

食べ終わって店を出たけれど風が強いのでしばし港の待合室で時間をつぶすことにする。

 

そろそろかな、といったタイミングを見計らってメイン会場へ。日曜日で男子エリートということもあってかなりの方が今朝の船で渡ってきたようだ。知った顔に挨拶をしたりされたり。8メートル近い風をのぞけば晴れで、自分にとっては居心地のいいところに戻ってきた気がする。

 

今朝も同じように「いつもの場所」に移動してスタートを待つ。目の前にモト・コミセールが並ぶといよいよ最後のレースが始まる。男子エリートは154.7kmの13周回。

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 そして今朝も定刻にスタート。

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今回は登り始めへは行かず海沿いのパームラインへ。御神火温泉の駐車場へは降りずにもう少し先の町道との分岐まで移動したけれど突風で波飛沫が強く近寄れない。薄く小さな虹が目の前にできるほどだ。テトラポットに白く波がくだける。

1周目はニュートラルスタートということもあるかもしれないけれど、ラップタイム的にレースの進行が限りなく遅れている。ファーストアタックはマレーシアとベトナムの選手。

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 先へ進んで写真を撮りたいのだけれど波飛沫がすごい。まずはカメラに雨用のカバーをつけてアウターウェアのフードを被って大丈夫な態勢を整える。

 

2周目も逃げが続くが集団は活性化しているように見える。そして次の3周目の通過までにイラン・イスラム共和国チームが上手く体制を整えたようだ。

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横風をよけるために3人だけでエシェロン(雁行)を作り3番目の選手が門を閉じてリードアウトを保っている。かなり強力なアタックのようだ。

イラン・イスラム共和国の選手は毎年ツアー・オブ・ジャパンであっさりと勝ってしまうような印象があって悪く言われることもあるけれど、こういったところで巧者なのだと思う。

最後尾は全員でエシェロンを形成するほどの突風である。

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さらに先に進んで大きく曲がるコーナーのある付近へ。4周目はトップグループは変わらず。

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トップグループで新城幸也選手とともに周回を重ねる別府史之選手。

 

きょうは周回数が多いので行けるところまで逆回りで観戦してみようと思い大島空港との分岐まで進む。

ちょうどすぐそばにイラン・イスラム共和国チームのスタッフがやって来た。大島へ渡る船で見た近寄りがたい雰囲気もきょうはなく逃げをきめた様子に嬉しそうだ。

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5周目の選手の通過のあと、この写真をカメラのモニター画面で見せて"Your team?"とわざとたずねてみた。"Yes!"と返ってきたので、"Very strong!"と返してそれとなくコミュニケーションをとってみる。嬉しそうな笑顔が返って来た。

そして周回数がここで変更になったようだ。トータル10周回の119.0kmに。強風による進行の遅れが影響したようだ。

 

6周目、空港のトンネルまで来たがイラン・イスラム共和国チームの逃げが続く。

7周目は大島一周道路と交差する下り区間の途中まで移動したところで観戦。イラン・イスラム共和国チームの逃げもそろそろ限界のようだ。

 

大島一周道路を元町港方面へ下り再びメイン会場に戻る。向かい風なのでなかなか進まない。8周目の先頭グループは通過した後に到着。

実況では香港のCheung King Lok選手が強力なアタックをした。トラック競技でも活躍しているので、詳しい方から先に名前を教えていただいていたので親しみがある(読み的には「チェンキンロー」や「チェンキンロッ」あたりが正しいようだ)。

 

新城選手が単独で追っているようだけれどタイム差が縮まらない。

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メイン会場に響く実況を頼りに最後の瞬間を待つ。差がなかなか縮まらない。

最後は逃げきってCheung選手が優勝を決めた。

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もしも距離の短縮がなければ捕まえるチャンスがあったかもしれないけれど、Cheung選手はトラック競技の長距離部門も走る選手。それゆえに持っている引き出しがまた違うけれども、今回は上手く合てはまったのだと思う。

 

表彰台の前に陣取る。きょうは200人ぐらいの人が集まってまたプレスの方が撮影する場所がないほどだ。ところが強引に私の座っている上でドカッと強引に乗って場所をとってくる人がいる。重いんだけど…どうやら香港チームの監督のようである。それならばぜひ、ということで少しだけ場所を空けて"Congratulations! "と言ってみる。

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 2位の新城幸也選手、1位のCheung King Lok選手、3位の別府史之選手。

 

香港の国歌(実際は中国の国家と同じだけれど)が盛大に響き、全てが終わった。

 

帰りは新中央航空で調布まで飛ぶ予定だったけれど、風が弱まらない。大会がチャーターした全日空機は着陸できなかったらしい。ただ電話で確認してみると聞き覚えのあるパイロットの声で、

「飛びます!」

と力強い返事をいただく。

大島空港まで移動して自転車を輪行パッキングをして15:30まで時間をつぶす。調布飛行場からの飛行機が着陸できれば、という条件付きなので、何人かはリスクを回避するためタクシーで岡田港に向かって大型客船に乗ったようだ。

しーんとしたフロアで待つことしばし。駄目だったらもう一泊か。もしそうなら少しいい宿を紹介してもらおうかな、などと考えて気を紛らす。

調布からの飛行機は定刻に無事に着陸。これであとは飛んでしまえばこの旅も終わる。

 

 

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小さなプロペラ機だけれど、乗り込んでしまえばあまり心配はいらない。励まされるように力強くエンジンが始動する。短い滑走の後、離陸。

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さっきまでいた場所が眼下に遠くひろがり少し切なくなる。少し揺れながらも時々うとうととしていると20分ほどで調布飛行場へ。

一刻も早く帰りたいのでタクシーを拾って自宅へ。

「ただいま。」

 

 何回かに分けて公開してきましたが、かなりの方に読んでいただきとても感謝しています。久しぶりに文章を書く楽しさみたいなものも思い出しました。

東京にいながら世界を感じた三日半でした。行きにいっしょになったイラン・イスラム共和国チーム、いっしょに写真を撮って欲しい頼んできたシリアの選手、他にもいろいろな方と片言で話したりでアジアを凝縮した時間はとても素敵でした。

 

伊豆大島は船か飛行機に乗れば案外近いところです。今度は全日本選手権が開催されますが、都合がつくようならそれ以外でも何かの機会にまた行ってみたいと思います。

ありがとうございました。

(翌週、トラック競技を伊豆ベロドロームに観戦に行った話へと続きます。)